【地盤の瑕疵は免責?】

2008年12月08日 平成21年10月1日から「住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)」

その住宅は平成21年10月以降に引き渡す(契約時でないことに注意!)新築住宅ですか?
保険加入の準備はお済ですか?(工事中に検査を行うので着工前の申込みが必要です!)

いよいよ来年10月1日の住宅瑕疵担保履行法の本格施行を迎えるにあたり、保険法人も5社出そろい、工務店の皆さんも「保険」の加入に向け、準備を進められていることでしょう。
今回は、この瑕疵担保履行法の「瑕疵」判断について解説をしていきたいと思います(弁護士 秋野氏)

地盤の瑕疵は免責?

住宅瑕疵担保履行法において保険の対象となる瑕疵は、品確法上の瑕疵(構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入部に関する瑕疵)です。すべての瑕疵について瑕 疵保険が付保される訳ではありません。床の傷や床鳴りなどの補修費用については保険は使えず、工務店が独自に保証書などを交付して対応することになると考 えます。
さて、構造の瑕疵を考えると、大きくは基礎の瑕疵と木構造の瑕疵でしょう。
基礎の瑕疵については、やはり「不同沈下事故」が住宅トラブルの世界ではメインの事故です。ところが、各保険法人は、「地盤の瑕疵は免責」と言っているのです。

地盤と基礎の瑕疵の違い

我々が住宅裁判の中で基礎が不同沈下した案件を取り扱うとき、消費者側の弁護士は「基礎の瑕疵」として主張を展開していきます。要するに「軟弱な地盤に対 応するようにしっかりと杭基礎等にて基礎を作るべきであった」という主張を展開するのであり、「軟弱地盤が悪い」と主張うをするわけではありません。

実際の判例

実際の裁判例においても、京都地方裁判所平成12年10月16日判決は「建築業者は、地盤が均一の支持力を有するとは限らないことは当然認識すべきであ り、とくに盛土地盤に建築する場合には支持力の弱さが当然予想できる。従って、建築業者は建築に際して地盤の支持力が十分か否かを調査し、支持力が異なる 地盤に基礎をもうける場合には、一体的な基礎とし、さらに堅固な地盤にまで支持杭を入れるなどして、不同沈下を起こさないように配慮すべき義務がある」と 判示しています。
実際、地盤の瑕疵は基礎の瑕疵として評価されることが多いのです。

地盤調査とは?

不同沈下がなぜ発生すると言えば、地盤調査にミスがあるか、解析にミスがあるか、解析の結果の判断にミスがあるか(柱状改良工事が必要であるにもかかわらず、ベタ基礎で可との判断をしてしまうなど)、どこかにミスがあるからであると言えるでしょう。
地盤調査をなぜやるかと言えば、どのような基礎(杭を含む)に設計するかの判断をするための現地調査のためです。そして、解析を経て、最終的にベタ基礎に するか、柱状改良工事をするか、鋼管杭圧入工法を採用するかという判断は、要するに基礎設計の一部です。この判断のミスは、要するに設計ミスということが できるでしょう。

地盤保証とはなにか

ですから、本来、地盤調査会社から提出された地盤調査・解析・判断が示された地盤調査報告書は、工務店の設計者が基礎設計を決めるにあたっての判断資料の一部であるわけです。
即ち、基礎設計をするのは工務店であり、地盤調査会社は設計の補助をしているにすぎないのです。
ですから、この基礎設計のミスにより不同沈下を起こしたとすれば、その第一次的な責任は工務店が負わなければなりません。
地盤調査会社は設計の補助しかしていないのですから、それほど大きな責任を負うものではないのです(とくに調査結果、解析結果にミスがなく判断ミスをしているにすぎないケースでは。)
しかし、世の中、元請下請の力関係で、下請である地盤調査会社が責任を負わされることが多い。このリスクを分散させるために地盤保証制度が存在する、というのが地盤保証制度に対する私の理解です。

設計図書どおりの施工は瑕疵?

地盤沈下事故は、設計ミスにより生じるケースが多いことをご理解いただいた上で、図面通りに施工した結果生じた不具合(不同沈下)は瑕疵か?という論点について考えて見ましょう。
まず、設計事務所と工務店が別の会社であるケースでは、工務店にしてみれば設計事務所が作った図面通りに施工して責任を負わされてはたまらない!瑕疵担保責任は負えない!と主張したいところでしょう。
しかし、地盤が沈下している建物というのは、期待された性能に悖る建物であるので瑕疵ある建物というべきであり、いくら設計事務所が作った図面通りの施工であっても瑕疵担保責任は発生すると言うべきでしょう。
ちなみに、設計施工一体型の工務店の場合には、当然に不同沈下した建物について瑕疵担保責任を負うことになります。
結局、こうしたケースで工務店は瑕疵担保責任を負うが、保険約款上、「地盤の瑕疵は免責」と定められているから、保険金は出ませんよ、ということが言われているのです。
地盤の瑕疵と基礎の瑕疵はほぼ同義であり、現実に保険法人がどのように実務運用するのか、現時点では不明ですが、すべての事案で地盤の瑕疵だとして免責される可能性も高いのではないか?などと考えているところです。

施工精度の向上を

瑕疵担保履行法が施行になっても、「何か不具合が発生しても保険に加入しているから大丈夫だ」という安心感を持つのではなく、瑕疵の保険を使うと車の保険 と同じように保険料率が上がっていく、地盤の瑕疵のように保険金が出ない可能性があるものもある、ということを良く認識していただき、しっかりと施工精度 を高めて瑕疵のない家づくりをしていただきたいと思います。

【今回のポイント】

�@地盤沈下事故はたいてい基礎設計のミスから生じる
�A地盤調査会社は設計の補助を行うだけ
�Bただし事故発生時は元・下の力関係で調査会社が責任を負うケースが多い
�Cそのリスクをヘッジするのが地盤保証商品
�D地盤事故には瑕疵担保履行法の保険金が下りない可能性

秋野卓生

弁護士
弁護士法人 匠総合法律事務所
代表社員弁護士
兼大阪事務所所長

東京、大阪に法律事務所を開設し、全国の住宅紛争を取り扱っている。

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