保証事故事例あれこれ〜総集編〜

2008年02月19日 �A構造躯体に関する事故

柱・梁に関する事故は、そのほとんどが梁の事故であると「No.3 梁に関する保証事故」(平成19年4月号)でご紹介しました。
これらの事故は、1階をLDKなどとする大きな空間を確保するプランでの発生が目立ちます。
梁に負担がかかるような計画としたため、梁せい及び梁のかけ方に間違いがあり、2階の床の不陸が報告される例があります。
最近では、プレカット工場で事前に刻みを行うため、大工職人の方が行ってきた構造的チェックなどの役割をプレカット業者が担い、一定管理の元で行うようになってきました。
このように役割分担も大きく変化しており、今後の梁に関する事故がどのような傾向となるか予想がつきませんが、現在のところ梁に関する事故は減少してきているように感じます。

�B屋根の雨漏れに関する事故

庇のない住宅や、境界ギリギリに建てるため庇が取れない住宅が増えています。
庇の出寸法などの外観のデザインの変化により、軒先などの板金の形状も変化してきました。軒先の先端や壁と下屋根との取り合いなどの板金加工周辺の水切れが悪くなってしまい、外壁を伝って室内への雨水の浸入する事例が見受けられるようになりました。
その他、防水処理の対策が難しいトップライト周りに生ずる雨漏れは、トップライトを取り付ける際、現場合わせとして水切り材を取り付けている場合があり、その多くに枠の立ち上げや板金加工に問題があることが散見されます。
採光をとるためにトップライトは有効ですが、屋根に開口を設けるわけですから、特に注意深く防水処理について検討をしたうえで、施工を行っていただきたいと思います。

�C壁の防水に関する保証事故

保証事故の件数を部位別に見ると、「壁」の保証事故件数が全体の約6割を占めています。
本連載では、「No.4 壁に関する保証事故」(平成19年6月号)で、壁の構造耐力に関する保証事故についてご紹介しました。
また、「No.5 壁の防水に関する保証事故(バルコニー編)」(平成19年8月号)と「No.6 壁の防水に関する保証事故(外壁編)」(平成19年10月号)の2回に分けて、壁の防水に関する保証事故についてご紹介しました。
屋根の庇の出が十分であれば、結果的に事故が起きなかったと思われる住宅が増えており、そういう事故を処理していると、庇の重要性を強く感じます。外壁は屋根より様々な部品が使用されており、防水の施工の良否に関係すると思われる事故が少なくありません。
また、最近では、外壁をモルタル仕上げとする住宅が増えており、モルタル仕上げに対応した防水紙などを使用していないものや、『設計施工基準』に適合しない防水紙を使用している場合の事故が目立っています。
加えて、バルコニー編で説明したように、雨漏れ発生から短期間で腐朽が進行し、炭化したように黒くなったり、腐食により木材の断面の原型がなくなってし まったものが多く見られるようになりました。この様な事例では単なる雨漏れの問題としてとらえるのではなく、構造安全性に影響する大きな事故としてとらえ なければならず、また、この様なケースが増えているということに、私たちも大いに危機感を持っています。
外壁からの雨漏れについて、平成18年度に実施した実態調査において、壁内部の断熱材が普及する以前の住宅は、雨水が浸入しても室内側まで滴る現象に至る ことは少なく、その原因としては、おそらく壁内部を伝って外壁側で雨が外側に落ちてしまったり、或いは壁内部が空間であるため通気層と同じ役目となり、乾 燥させてしまう効果があったのではないかと考えました。
今後、防水性能などの壁の仕様について、どのように考えていけばよいか、これらの問題に対して課題を投げかけられているように感じています。

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